アジア太平洋資料センター(PARC)の奥村と申します。
ハマスによるイスラエルへの襲撃と、イスラエルによるガザ地区への報復攻撃、
という事態を受けて、PARCでは、パレスチナ人権センターの緊急声明および
現地報告を仮訳して、ウェブサイトに掲載しました。
翻訳掲載にあたってのPARCからの前文とともに、ご案内させていただきますので、
ぜひ多くの方にお読みいただければ幸いです。
パレスチナ人権センターより国際社会に求める緊急要請(仮訳)|PARC
https://parc-jp.org/info/pchr1008/
(以下、記事より抜粋)
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2023年10月7日現地時間明け方よりパレスチナ・ガザ地区に拠点を置くハマスの戦闘員
がイスラエルを襲撃したことはすでに国内外で報じられている通りです。
アジア太平洋資料センター(PARC)はそのルーツをベトナム反戦運動に持ち、その
設立から常に武力・暴力による目的の達成を支持してきませんでした。
今回のイスラエルに対する襲撃についても、その背景にはイスラエルによる長年に
わたる占領とパレスチナの人びとに対する執拗な人権侵害があったことを認めながらも、
ハマスがとった手段については支持・正当化する立場にありません。
一方で、国際社会のあまりに偏向した報道には問題があると言わざるを得ません。
この度、国連人権理事会等にもたびたびイスラエル占領軍による人権侵害を報告してきた
パレスチナ人権センター(Palestinian Centre for Human Rights)が国際社会に発した
緊急要請に対して、それを仮訳し、同センターが掲載するパレスチナからの状況報告と
合わせてPARCウェブサイトにて公開することで持って賛同の意を表します。
以下は、パレスチナ人権センターによる国際社会への緊急要請の全文と、同センターが
ウェブサイトにて詳細に報告しているガザの被害の様子です。
センターによる原文のインターネット上での発信は下記のページにて最新情報をご確認
いただけます。
https://www.pchrgaza.org/
ただし、2023年10月13日現在、パレスチナガザ地区は電気、ガス、水道などのインフラ
が停止させられている状況にあり、今後同水準での詳報が困難になる可能性はご理解ください。
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(以下、翻訳本文)
イスラエルによるパレスチナ市民への報復を阻止するため、
国際社会が直ちに行動を起こすようパレスチナ団体が要請
2023年10月08日
何十年もの間、私たちの団体は、パレスチナの現状、すなわちイスラエルによる入植者
植民地主義、アパルトヘイト、不法占拠の根本原因や、自決権を含むパレスチナ人の
不可侵の権利を国際社会が否定し続けてきたことが示す国際社会の消極性や意図的な
失敗に対して警鐘を鳴らしてきた。
私たちの初動段階における現地情報によると、イスラエル軍は一晩中、ガザの民間人に
対し数回にわたり攻撃を行った。何十軒もの家屋や住宅、商業施設を破壊し、しばしば
警告を発することなく家族を皆殺しにした。現地の状況は深刻であり、国際社会による
即時かつ緊急の介入が必要である。
2023年10月7日(土)、パレスチナの武装集団は、イスラエルによるパレスチナ人に
対する犯罪の深刻化(ガザ地区の継続的な閉鎖、ヨルダン川西岸地区での連日の軍事
襲撃、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人コミュニティに対する攻撃、殺害*、大量の
恣意的な逮捕、イスラエルに拘束されているパレスチナ人囚人に対する非人道的な扱い、
天然資源の横領、家屋の取り壊し、入植者によるアル・アクサ礼拝堂の襲撃など)に
対抗するための作戦に従事した。
土曜日の午後早く、イスラエルは民間人に対する報復措置とみられる行為としてガザ
地区を空、陸、海から爆撃し始めた。これはイスラエル軍がガザ、ジェニン、そして
占領下のパレスチナ全域で日常的に行っていることである。パレスチナ保健省によると、
土曜日の午後以降、少なくとも20人の子どもを含む313人のパレスチナ人が死亡し、
さらに少なくとも121人の子どもを含む1,990人が負傷した**。
イスラエルの攻撃は、ガザ地区全域のパレスチナ市民と民間インフラを標的とした。
ガザ・シティでは、ファラステーン・タワー、ワタン・タワー、アル・アクルーク・
タワーなど、複数の高層ビルを標的とし、破壊した。ガザ・シティでは、別のイスラ
エル軍の攻撃がシャバン一家の家を襲い、両親とその子どもたち6人全員が死亡した。
北ガザ地区のベイト・ハヌーンでは、イスラエル軍の攻撃がシャバット家の家を標的
にし、女性と子どもを含む12人のパレスチナ人が死亡した。北ガザでは救急車も攻撃
され、救急隊員2人が死亡した。カーン・ユニスでは、イスラエル軍の攻撃がアブ・
ダッカ一家の家を標的にし、女性や子どもを含む18人が死亡した。別のイスラエル軍
の攻撃は、ナセル病院前の救急車を標的にした。ミドル・エリア地区では、イスラエル
軍は家族の家を狙った攻撃を数回行った。アブ・ルカブの家族の家を襲った攻撃では、
7人が死亡し、うち6人は子どもだった。ラファでは、イスラエル軍の攻撃がアブ・クー
タ一家の家を標的とし、パレスチナ人17人(うちアブ・クータ一家12人、子供と女性)
が死亡した。多くの人々がまだ瓦礫の下に埋もれているため、死者数が増えることは
避けられないだろう。
土曜日の夕方、イスラエルのエネルギー・水担当大臣は、イスラエルからガザ地区へ
の電力供給を停止すると発表した。ガザ配電会社の報告によると、土曜日の朝以来、
イスラエルからの送電線は機能していない。現在ガザでは、地元の発電所(イスラエル
経由でガザに入る燃料に依存している)が生産する約60メガワットの電力しか利用できず、
保護されている市民は1日4時間の電力に頼るしかない。これでは、病院をはじめとする
多くの重要なインフラが十分な電力を確保できず、人道的大惨事につながるのは必至だ。
過去15年間、イスラエルはガザに対して少なくとも6回の大規模な軍事攻撃を行ってきた。
そのたびに、私たちの組織は現地に赴き、イスラエル当局が無差別かつ不均衡な攻撃、
数千人の市民の殺傷、民間インフラの破壊など、ガザの市民に対して戦争犯罪や人道に対
する罪を犯したという明確な根拠を集めてきた。国際人道法は、敵対行為中、民間人と
民間物は直接的かつ無差別的な攻撃から保護されなければならないと定めている。
医療従事者や医療施設も保護されなければならず、攻撃の対象にしてはならない。
土曜日の夕方に開かれたイスラエル政府の会合で、イスラエルの女性地位向上大臣である
メイ・ゴランは次のように述べた:
「ガザのすべてのインフラを土台から破壊し、直ちに電気を止めなければならない。
戦争はハマスに対するものではなく、ガザという国家に対するものだ」
その後、イスラエルのネタニヤフ首相はこう宣言した:
「ガザの住民に告ぐ、今すぐそこから脱出せよ。我々は(ガザ)全域にて全力で行動する」
これらの発言は、世界で最も人口密度の高い地域のひとつであるガザを、民間人や民間
インフラを完全に無視して絨毯爆撃する意図を示唆している。また、ガザには避難所がなく、
イスラエルが閉鎖しているため、人びとはガザを離れることができない。
アル・ハク、アル・メザン、そしてパレスチナ人権センター(PCHR)は、国際社会に対し、
ガザの民間人や民間物に対するイスラエルの復讐と報復を阻止するため、即時かつ緊急に
行動を起こすよう強く要請する。上記で引用したイスラエル政府による最新の声明は、
前例のない数の殺害を予感させるものであり、その矛先は民間人に向けられている。
第三国が責任もってその履行にかかわる形でイスラエルによる説明責任を求めることが、
同国の犯罪を終わらせる鍵である。我々は、国際刑事裁判所の検察官に対し、2022年12月
に約束された通り、全面的な動員と現地視察をもって、パレスチナ情勢に関する調査を
迅速化するよう求める。もしイスラエルがパレスチナの人びとに対して犯した国際犯罪の
責任を追及するために、国際社会が直ちに行動を起こさなければ、さらに多くの民間人が
犠牲になり、破壊が続くことになる。
このため、私たちは国連安全保障理事会、第三国、国連加盟国に対し、イスラエルのパレス
チナ人民に対する攻撃を停止させるため、必要なあらゆる手段を用いて直ちに介入し、イス
ラエルに制裁と武器禁輸を課すよう求める。国際社会は、国際的な義務に従い、1967年以来
続く侵略行為としてのイスラエルの不法な占領を終結させるために協力し、占領政権の解体、
領土からのすべてのイスラエル占領軍の完全かつ無条件の撤退、イスラエルのアパルトヘイト
体制の解体を確実にしなければならない。
* 2023年1月1日から9月30日までに、イスラエル軍と入植者は、パレスチナ占領地から45人の
子どもを含む234人のパレスチナ人を殺害した。
** 2023年10月8日12時時点。
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※ウェブ記事では、PCHRがまとめている、イスラエルによる報復攻撃によって
民間人等に及んだ被害の現場からの報告をあわせて翻訳掲載しています。
記事全体は以下よりお読みください。
パレスチナ人権センターより国際社会に求める緊急要請(仮訳)|PARC
https://parc-jp.org/info/pchr1008/
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(以上)