<2017年3月メール通信> BCC送信
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『保護貿易 vs. 自由貿易』
2017年3月21日
池住義憲
(末尾に4月中旬までの講演会等案内あり)
◆保護貿易か、自由貿易か
英国は、昨年6月の国民投票でEU離脱を表明。今年1月発足した米・トランプ政権は保護主義を掲げ、同月下旬、英国のEU離脱を称賛しました。これににより、世界が大きく揺れています。
本来、自由貿易は経済成長を促し、その果実で傷みを受けた人々を支援する、とされてきました。しかし、そうはならなかった。それどころか、行き過ぎた経済グローバル化は、格差を拡大し、先進国の賃金を下げ、雇用を奪った。自由貿易は「善」、保護貿易は「悪」とする新自由主義経済を謳歌してきたのは、米英両国です。その米英両国で、揺り戻しが起こっているのです。
3月17〜18日ドイツで開催された財務省・中央銀行総裁会議(G20)は、これまで堅持してきた「保護主義に対抗する」という文言を声明から削除。貿易体制そのものが揺れ動き始めています。G20が終わるやいなや、安倍首相は、EU加盟主要国ドイツ、フランス、イタリヤ、ベルギーを歴訪。自由貿易推進の重要性を説いて回っています。
◆もう一つの選択肢
私は、「A(自由貿易)かB(保護貿易)?」という単純化した二者択一の議論には、与(くみ)しません。「自由貿易」と「保護貿易」の二つの選択肢しか設定されない考え方・枠組みに、私は与しまえん。もう一つの、選択肢があるのです。それは、「公正に基づいた貿易」。
私は、国際貿易そのものを否定していません。異なる民族や異なる文化・価値観・宗教が行き来することは、人を、社会を、国を豊かにする。ただし、条件があります。その条件とは、ヽ胴餬从僉各地域経済の多様性を損ねないこと、⊆匆顱κ顕修梁人誉を損ねないこと、4超保全と生物多様性を損ねないこと。
この三つの多様性を判断する基準は、すでにあります。労働・雇用に関しては、国際労働基準を定めた国際労働条約(ILO条約)。二国間・多国間問わずいかなる経済協定であっても、ILO条約に沿ったものでなければならない。その基準を下回ってはならない。
経済および社会・文化の多様性については、1995年にデンマークで開催された世界社会開発サミットでの「コペンハーゲン宣言及び行動計画」 。さらには、飢餓人口8億人の半減を宣言し、世界食料安全保障の達成を謳った、1996年の世界食糧サミットでの「ローマ宣言」。二国間・多国間問わずいかなる経済協定であっても、これを下回ってはならない。
環境と開発に関しては、1992年、リオ・デ・ジャネイロで採択された「リオ宣言」 と、その行動計画である「アジェンダ21」を下回ってはならない。二国間・多国間問わずいかなる経済協定であっても、この宣言と行動計画を最大限、尊重しなければならない。
●「公正に基づいた貿易」
保護貿易か自由貿易かの二者択一でなく、もう一つの選択肢。それは「公正にもとづいた貿易」です。
辞書にはまだ載っていませんが、「ジャストピース」(Justpeace)という言葉があります。「公正にもとづいた平和」、という意味です。ジャストピースのジャスト(Just)は、「公正・正義」。この場合、大切なことは、自分たち地域だけの公正・正義でなく、他の地域・社会・国の公正・正義も含む、ということ。その「ジャスト」(Just)と「平和」(Peace)の二語を組み合わせたのがこの言葉です。
別の言い方をすると、ある人・ある地域を犠牲にして成り立っている平和はジャストピースではない、ということ。たとえば、先住民であるアイヌの人たちの土地を収奪し、北海道旧土人保護法(1899〜1997年)の下で長きにわたる差別(意識・無意識を問わず)の上に成り立っていた日本の”平和”と”繁栄”は、ジャストピースではない。ジャストピースとは呼ばない。米軍基地/施設の74%を、国土面積のわずか0.6%の沖縄に押し付けて成り立っている日本の”平和”と”繁栄”と”安全”は、ジャストピースではない。ジャストピースとは呼ばない。
貿易も、同じです。他者、他地域、他国を傷つけた上で成り立っている自国の経済繁栄は、平和でない。平和とは呼ばない。各地域経済、各国経済の多様性を損なう貿易協定は、公正ではない。他地域、他国の社会・文化の多様性を損な貿易協定は、公正ではない。他地域、他国の環境と生物多様性を損な貿易協定は、公正ではない。
私たちが望むのは、他者を、他地域を、他国を傷つけず、損なわず、公正に基づいた「ヒト、モノ、サービス、文化等が行き来」できるルール作り(貿易協定)です。私は、それを「公正に基づいた貿易」と呼んでいます。
●おわりに: 「Economy」と「平和」の語源
経済を意味している英語の「エコノミー」(Economy)は、二つのラテン語から組み合わさってできています。「エコー」は均衡、「ノーム」は規範。つまり、すべての人が均等に、均衡に生きることができる社会に必要な規範、ルール、仕組み。それが、エコノミー。
次に、日本語の「平和」。この文字・言葉は、三千数百年前に中国から入ってきたもの。この語源も、意味深い。「平」は、平等、皆同じという意味。和の左側の「禾」は、穀物。右側の「口」は、字のとおり口(mouth)。つまり、「平和」の語源は、「すべての人が、等しく、穀物を口にする、穀物を食する」ことができる社会の状態、関係を指しています。エコノミーも、平和も、語源を辿れば、同じです。これこそまさに、ジャストピース、です。
以上
*なぜ、どのように保護貿易から自由貿易へと移行したのかなど、
グローバリゼーションの大まかな流れに関心のある方は、ご一報ください
(→ ikezumi@mtb.biglobe.ne.jp )。2011年2月に書いたものですが、
『グローバリゼーションを読み解く』(7,533字)を添付ファイルでお送りします。
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<3月下旬〜4月中旬 講演会等案内>
〜〜どなたでも参加できます〜〜
●「市民アクション@愛知6区」設立総会(小牧市)
【日時】 3月26日(日) 13:30〜
【場所】 小牧勤労センター(小牧市大字上末2233-2)
*JR中央本線「春日井」駅下車徒歩15分
【内容】 次期衆院(解散)総選挙に向けて、愛知選挙区第6区で野党統一候補の実現とその勝利を目指す市民グループを立ち上げる。テーマは、『平和・いのち・くらしを考え、いま、私たちできることは』。(講演:池住義憲 & 10代の若〜い有権者のトークなど)
【参加費】 無料
【主催】 市民アクション@愛知6区
●革新・江南の会総会講演会(江南市)
【日時】 4月2日(日) 10:00〜11:45
【場所】 江南市老人福祉センター(江南市古知野町宮裏121)
*名鉄「江南」駅下車徒歩約12分
【内容】 記念講演「加害者にならない権利〜自衛隊の南スーダンPKO派遣と私たち」
講師:池住義憲
【参加費】 無料
【主催】 革新・江南の会
●「市民と野党をつなぐ会@愛知7区」講演会(尾張旭市)
【日時】 4月2日(日) 13:30〜16:00 (13:00開場)
【場所】 尾張旭市文化会館 あさひのホール
*名鉄瀬戸線「尾張旭」駅下車 南へ徒歩約8分
【テーマ】 『新潟の経験から学ぶ 〜新しい市民政治の胎動』
【講師】 佐々木寛さん(市民連合@新潟 共同代表
(新潟国際情報大学国際学部教授)
*2016年参院選新潟選挙区と新潟知事選で、市民と野党
統一を実現した、「オー ルにいがた平和と共生」および
「新潟に新しいリーダーを誕生させる会」で代表を務め
”新潟ショック”を全国に起こした立役者!
【参加費】 500円(大学生以下 無料)
【主催】 「市民と野党をつなぐ会@愛知7区」
●「英国の旅」説明会(名古屋市)
【日時】 4月8日(土) 14:00〜16:00
【場所】 名古屋国鉄会館(名古屋市中村区椿町20−15)
*JRまたは地下鉄「四ツ谷」駅出口2より徒歩10分
【内容】々岷蕁嵜綟算業民営化の問題点」(椿本祐弘さん)
地方議員からの報告と参加者意見交換
その他
【備考】 ・無料
・当日、関連資料をお渡しします
●「地域の経済と自治を守る市民と議員の会」講演と意見交換会(東京)
【日時】 4月8日(土) 13:30〜16:50
【場所】 新宿区立歴史博物館講堂(新宿区三栄超22)
*JR名古屋駅西口より徒歩5分
地図⇒ https://ssl.regasu-shinjuku.or.jp/rekihaku/guidance/91/#kotsuaccess
【内容】 水道・公共インフラが奪われる−水道法改正・PPP/PFI推進施策の問題点
ヾ霙換岷蕁椿本祐弘氏(フリ−ジャ−ナリスト)
地方自治体議員からの報告と意見交換
【備考】 1,000円(首長・議員は2,000円)
【主催】 地域の経済と自治を守る市民と議員の会
以上