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トマ・ピケティ『21世紀の資本』

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    評価:
    トマ・ピケティ
    みすず書房
    ¥ 5,940
    (2014-12-09)

    Okabyです。
    700ページ以上の分厚い本でしたが、年末年始の時間を使ってやっとこさ読めました。
    「ピケティ現象」とか言われ、こんな分厚く高い本なのに、昨年末には近所の大型書店でも社会新刊で1位、入門書2冊も上位になっていました。
     
    朝日新聞の元旦でインタビューが掲載されていたり、
    http://www.asahi.com/articles/ASGDS4G49GDSUPQJ003.html
     
    勲章を受け取らなかったりとか。
    http://www.asahi.com/articles/ASH126H5RH12UHBI00V.html
     
     ピケティが主張したいことは簡潔に言えば、資本主義は格差を拡大するので、金持ちと資本へ国際的に課税強化すべしということで、その結論はそれほど目新しいものではないですが、結論を裏付ける歴史的に蓄積された経済データを駆使して分析しているところで、本書が括目されているわけです。といっても、この本は一般向けに書かれているので、難しい数式などはなくて、とても読みやすいです。
     
     以下、長文になるので、見出しをつけておきます。
     
    〇駛楴益率r>経済成長率gで格差拡大、格差是正のために世界的な資本税
     
    根本的な不等式
      r>g
     
    が示されています。
    すなわち、
    r(資本収益率)は資本の平均収益率で、利潤、配当、利子、賃料などの資本からの収入を、その資本の総価値で割ったもの
    g(経済成長率)はその経済の成長率、つまり所得や産出の増加率
    で、
    資本収益率が経済の成長率を大幅に上回ると(19世紀まで歴史のほとんどの時期はそうだったし、21世紀もどうやらそうなりそうだ)、論理的にいって相続財産は産出や所得よりも急速に増える。相続財産を持つ人々は、資本からの所得のごく一部を貯蓄するだけで、その資本を経済全体より急速に増やせる。こうした条件下では、相続財産が生涯の労働で得た富より圧倒的に大きなものとなるし、資本の集積はきわめて高い水準に達する――潜在的には、それは現代の民主社会にとって基本となる能力主義的な価値観や社会正義の原理とは相いれない水準達しかねない。
    29ページ)
     
     改善策として、ユートピアな発想として「世界的な資本税」、すなわち、きわめて高水準の国際金融の透明性と組み合わせた、資本に対する世界的な累進課税が提唱されています(第15章)。
    なお、邦訳では「空想的な発想」とされていますが、これだと非現実的な発想というニュアンスがあるので、「ユートピア的な発想」と理解した方がいいですね。
     
     世界的な資本課税を行うには、そうした国際的合意を得ることが必要で、なかなかまだまだ政治的には困難でしょうが、技術的には可能だそうです。
     もちろん
    世界金融システムの監督規制を現在つかさどっている国際機関は、IMFを筆頭に、金融資産の世界的分布についてかなり大ざっぱな情報しか持っていないし、特にタックス・ヘイブンに隠された資産の量ははっきりできていない。>(544ページ)のですが、簡単な解決策として銀行情報の自動送信があるということです。
    タックス・ヘイブンは、銀行の秘密性維持のための口実を持ち出してくるでしょうが、<タックス・ヘイブンが銀行の機密性を守ろうとするもっともありそうな理由は、その利用者たちが納税義務を回避して、それよりタックス・ヘイブンもその分の利益の一部をもらえるから、というものだ。当然ながら、これは市場経済の原理とはいいさい何の関係もない。
    自分で自分の税率を決める権利など誰にもない。自由貿易と経済統合でお金持ちになった個人が、隣人たちを犠牲にして利潤をかき集めるなどというのは正当ではない。それは窃盗以外の何物でもない。>(546547ページ)とのことです。
     
    ⇔濘併駛楡如椒ぅ鵐侫譴埜的債務を解決
     
     第16章では、公的債務の問題にふれていて、インフレ政策について触れられていて興味深いです。おそらく、主要テーマである資本課税で格差是正をといことばかり注目しているので、とくに左派の経済学者などからは無視されて都合よくピケティを利用されるでしょうから、特記しておきます。
     ピケティは、巨額の公的債務を減らすためにも資本課税が最高の方法だそうです。
    最も透明性が高く、公正で、効率的な手法だからです。
     もうひとつ考えられる選択肢としてインフレがあるということです。
    国債は実質資産(つまり価格が経済状況に対応して変わり、通常は不動産や株式などのようにインフレに負けない速度で価格が上がる資産)ではなく、名目資産(つまり価格は事前に決まっておりインフレに左右されない資産)なので、インフレ率が少しでも上がると、公的債務の実質価値は大幅に減る>(572ページ)からです。
     それゆえ、ピケティは、ヨーロッパの公的債務負担から逃れるためにも、資本税とインフレが必要だと訴えています。
    ただし、インフレはせいぜいが、累進資本税の代替としてきわめて不完全なものでしかなく、副作用があるとします。インフレは制御がむずかしく、インフレ・スパイラルのリスクがあり、インフレが永続化して期待に埋め込まれると、政府にお金を貸そうとする人はその分高めの金利を要求するようになるからです。
     インフレはある意味で遊休資本に対する課税であり、動的な資本を奨励するものであるが、巨大で分散化されたポートフォリオがその規模のおかげだけで(つまり持ち主の個人的な努力いっさいなしに)収益を上げるのはいっさい妨げないので、富を正しい方向に再分配することもあれば、時にはそうではない、かなり粗雑で厳密さに欠くツールだとも言っています。その上で、インフレをちょっと高めるのと、緊縮財政をもっと進めるのとでどっちを選ぶと言われたら、間違いなくインフレの方がのぞましいとしています。(572575ページ)
     別のことでは、インフレによる再分配のメカニズムはきわめて強力で、イギリスでもフランスでも、20世紀に重要な歴史的役割を果たしたことを認めつつ、大きな問題が二つあるとしています。
    第一に、対象の選択がかなり雑だということ。ある程度の富を持つ人たちの中でも、(直接的か、銀行預金を介して間接的かにかかわらず)国債を所有している人たちは、必ずしも最も金持ち層ではない。むしろそれほど大金持ちでない人が多いのだ。第二に、インフレのメカニズムは永久には続けられない。インフレが恒久化すると、貸し手はもっと高い名目金利を求めるようになり、価格の上昇が起きて望ましい効果が得られなくなる。それに高インフレは常に加速しやすく、ひとたび勢いがついてしまうと止めるのはむずかしい。さらに、その結果を思いのままにするのは困難で、所得がかなり増える社会集団と、まったく増えない社会集団が出てきた。1970年代――富裕国でのインフレと、失業力の増加、相対的な経済停滞(スタグフレーション)の10年間――低インフレがよいという新たな合意が形成された。>(141ページ)
     
    F本はどうすればいいか?
     
     具体的に私たちにかかわる事柄として、ピケティは日本の公的債務の問題をどのようにすればいいかと考えているか?
     先に紹介した朝日新聞インタビュー
    「失われた平等を求めて 経済学者、トマ・ピケティ教授」
    http://digital.asahi.com/articles/ASGDS4G49GDSUPQJ003.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGDS4G49GDSUPQJ003
    で以下の通り答えています。
       ↓
    =================================
    ■民間資産への累進課税、日本こそ徹底しやすい
     
     ――先進国が抱える巨大な借金も再分配を難しくし、社会の不平等を進めかねません。
     
     「欧州でも日本でも忘れられがちなことがある。それは民間資産の巨大な蓄積です。日欧とも対国内総生産(GDP)比で増え続けている。私たちはかつてないほど裕福なのです。貧しいのは政府。解決に必要なのは仕組みです」
     「国の借金がGDPの200%だとしても、日本の場合、それはそのまま民間の富に一致します。対外債務ではないのです。また日本の民間資本、民間資産は70年代にはGDPの2、3倍だったけれど、この数十年で6、7倍に増えています」
     
     ――財政を健全化するための方法はあるということですね。
     
     「日本は欧州各国より大規模で経済的にはしっかりまとまっています。一つの税制、財政、社会、教育政策を持つことは欧州より簡単です。だから、日本はもっと公正で累進的な税制、社会政策を持とうと決めることができます。そのために世界政府ができるのを待つ必要もないし、完璧な国際協力を待つ必要もない。日本の政府は消費税を永遠に上げ続けるようにだれからも強制されていない。つまり、もっと累進的な税制にすることは可能なのです」
     
     ――ほかに解決方法は?
     
     「仏独は第2次大戦が終わったとき、GDPの200%ほどの借金を抱えていました。けれども、それが1950年にはほとんど消えた。その間に何が起きたか。当然、ちゃんと返したわけではない。債権放棄とインフレです」
     「インフレは公的債務を早く減らします。しかしそれは少しばかり野蛮なやりかたです。つつましい暮らしをしている人たちに打撃をもたらすからです」
     
     ――デフレに苦しむ日本はインフレを起こそうとしています。
     
     「グローバル経済の中でできるかどうか。円やユーロをどんどん刷って、不動産や株の値をつり上げてバブルをつくる。それはよい方向とは思えません。特定のグループを大もうけさせることにはなっても、それが必ずしもよいグループではないからです。インフレ率を上昇させる唯一のやり方は、給料とくに公務員の給料を5%上げることでしょう」
     
     ――それは政策としては難しそうです。
     
     「私は、もっとよい方法は日本でも欧州でも民間資産への累進課税だと思います。それは実際にはインフレと同じ効果を発揮しますが、いわばインフレの文明化された形なのです。負担をもっとうまく再分配できますから。たとえば、50万ユーロ(約7千万円)までの資産に対しては0・1%、50万から100万ユーロまでなら1%という具合。資産は集中していて20万ユーロ以下の人たちは大した資産を持っていない。だから、何も失うことがない。ほとんど丸ごと守られます」
     「インフレもその文明化された形である累進税制も拒むならば大してできることはありません」
     
    =================================
     
     つまり、日本も公的債務を減らすよう財政を健全化さなければならないが、緊縮財政ではなく、累進課税を強化すべきで、またインフレをすすめればいい(インフレ目標政策は支持しているということか?)、ただしインフレにするためには金融緩和でバブルをつくるやり方ではなく、賃上げ目標をたてるなどすべきだ、ということですね。
     日本の政党で言えば共産党の主張に近いですね。ただし、日本共産党とは違うところは、ピケティはヨーロッパ左翼の常識的考えで、インフレはいいことで、中央銀行の通貨供給で再分配をすべきという主張ですけどね。中央銀行の政府からの独立性を保てなんて眠たいことは言わずに。
     
    ぁ屮璽軅長」「脱成長」? 経済的に停滞すれば格差はますます広がるよ
     
     さて、ピケティの「歴史政治経済学」の功績を都合よく使うと矛盾をきたすのが、「脱成長」とかいう議論です。ピケティの持論は経済成長率よりも資本収益率が高ければ格差が広がるわけですから、経済成長しなければ格差は広がっていくでしょう。
    実際に、経済成長しない停滞社会はどうだったかといえば。
    ほとんど停滞した社会は、過去に蓄積された富が、異様なほどの重要な確実を持つようになる。
     だから21世紀の資本/所得比率が1819世紀の水準に並ぶほど構造的に高い水準になってしまうのは、低成長時代に復帰したせいだと言える。
    だから成長――特に人口増加――の鈍化こそが、資本が復活をとげた原因だ。>(175ページ)
     
     とくにピケティは世襲による相続資産の増大を指摘し、不労所得生活者は「民主主義の敵」とまで言っていますが、停滞した社会はそうした有閑階級にとっては好都合なロハスな社会なのですね。
     もちろん富裕国でかつての高度成長期のような成長率を実現することは無理だろうし、人口減も不可避なわけですが、それでも年1、2%の成長は可能でしょう。実際、長期的スパンでならしていけば、成長率はその程度で推移しているのですから。
     
    21世紀の資本論」?それは19世紀の「資本論」の否定? 
     
     この本は本来なら、マルクスの『資本論』を意識したタイトルだから、『21世紀の資本論』とすべきだろうと思いますが、かといって、マルクス経済学の本ではないし、むしろマルクスの予見が間違いだったという前提で論が立てられています。
     明確に言っています。
    < 私の結論は、マルクスの無限蓄積の原理と永続的格差拡大の含意ほど悲惨ではない(というのもマルクスの理論は暗黙のうちに、長期的な生産増大がゼロだという厳密な想定に依存しているからだ)。>(29ページ)
    つまり、「利潤率の低下」法則は間違いだということです。
    < マルクスにとって、「ブルジョワが墓穴を掘る」おもなメカニズムは、私が「はじめに」で「無限蓄積の原理」と称したものに起因するメカニズムだ。資本家たちがかつてない量の資本を蓄積したことが、結局は否応なく収益率(すなわち資本収益)を低下させ、最終的には投資家自身の転落を招くということになる。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・
     つまりマルクスが指摘した動学的矛盾は、たしかに本物の困難を示すものだ。唯一の論理的な出口が構造成長であるり、それが資本蓄積のプロセスを(ある程度)均衡させる唯一の方法なのだ。>(236237ページ)
    なぜならば、<生産性の伸びと知識の拡散を基盤とした現代の成長は、マルクスが予測した大厄災の回避と、資本蓄積プロセスの均斉化を可能にした。>(243ページ)からです。
    端的に言えば、マルクスと大違いでピケティは資本主義が危機であるとか崩壊に向かっているなんていう考えは否定しています。
     ましてや、「成熟社会」は資本蓄積をしない社会だから社会主義社会だとかいう主張もありますが、そんなことはありえないでしょってことなのでしょうね。
    ほかにも、「成長なき経済」で資本主義は終焉しつつある、だから中世のような社会がいいなんてアナクロ二ズムも、「里山」で働くのもいいよとかいう程度の話を大げさに「資本主義」と銘打つとか、「移行期的混乱」とかいって人生体験談で混乱せずに、経済法則の一貫性を理解して、格差是正に向けた政治的決定をはかるよう現実的な提案をしているピケティは、さすが日本のやわな野党的知識人とは大違いかなあ・・・。すぐに円・国際暴落とかハイパーインフレだとか声高に叫ぶエコノミストは論外として。

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