calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< October 2017 >>

categories

archives

カウンター

twitter

カレンダー

プラセンタ 効果

ランキング

イスラエル版歴史修正主義「新しい歴史家」について

0

    みなさま、
    京都大学の岡真理です。
    すでにご案内いたしましたように、イスラエルの「新しい歴史家」のお一人、アヴィ・シュライム先生の講演会、明日6日(木)です。

    その「新しい歴史家」(New Historians)について、先の告知メールでは詳しく触れられなかったので、このメールでちょっと詳しくご説明いたします。

    ●イスラエルの「新しい歴史家」とは何か――イスラエル版歴史修正主義

    1980年代に入り、イスラエルでは、30年前の建国(1948年)をめぐる公文書や機密文書が公開され、歴史家たちが、従来のナショナル・イデオロギーに基づく公的な歴史/建国神話に代わり、これら新たに公開された史料に基づいて、実証主義的な歴史研究を次々に発表するようになります。

    たとえば、それまで、公的な歴史では、パレスチナ人は自発的に自分たちの村を出て行った、アラブ諸国軍が圧倒的に軍事的に優位だった、和平を拒んだのはアラブ側・・・等々とされていたのに対し、新しい歴史家たちは、パレスチナ人は追放されて難民になった、イスラエルのほうが軍事的にも人的にも優位だった、和平を拒んだのはイスラエルであることなどを、実証研究によって明らかにしました。

    一言で言えば、従来のイスラエルの歴史は、ナショナル・イデオロギーであるシオニズムによって、自国に都合よく歪められていたものでしたが、1980年代に登場した一連の歴史家たちは、実証研究によってこれを否定し、イスラエルの建国が実際にはいかなるものであったのかを明らかにしました。
    これが、イスラエルの「新しい歴史家たち」です。

    従来の歴史観を否定し、それとは真逆の、新たな歴史を提唱するという点において、「新しい歴史家たち」は歴史修正主義です。
    しかし、このイスラエル版歴史修正主義は、ヨーロッパや日本におけるそれとは、逆のベクトルのものです。
    「新しい歴史家たち」の研究は、イスラエル社会のなかで、いくつもの大きな論争を呼ぶことになります。

    ●新しい歴史家たち

    「新しい歴史家」として数えられるのは、ベニー・モリス(『パレスチナ難民問題の起源』)、イラン・パペ(『パレスチナの民族浄化』)、アヴィ・シュライム(『鉄の壁 イスラエルとアラブ世界』)、トム・セゲヴ(『7番目の100万人』)、シムハ・フラパンです。

    「新しい歴史家たち」は、シオニズムを相対化しましたが、彼らの政治的立場は、それぞれに異なります。
    著書『パレスチナの民族浄化』において、パレスチナの地に「ユダヤ国家」を建設する以上、パレスチナ人の民族浄化は、シオニズムのプロジェクトに本質的かつ不可避のものとして孕まれていたと主張するイラン・パペは、ユダヤ国家そのものを否定する、筋金入りの反シオニストです。

    その対極に位置するのが、ベニー・モリスです。
    モリスはその著書『パレスチナ難民問題の起源』において、パレスチナ人は自発的に村を出て行ったのではなく、追放されたことを明らかにしましたが、それは「ユダヤ国家」を建設するためには必要なことであったと、これを肯定するなど、シオニズムを全面的に肯定しています。

    アヴィ・シュライム、シムハ・フラパンは、いわば、その中間に位置します。
    パペが、イスラエルの建国自体を倫理的に誤ったものと見なすのに対し、シュライムとフラパンは1948年に成立したイスラエルに関しては正統性を疑いません。
    しかし、占領をはじめ、イスラエルがやっていることに関しては、これを批判します。

    ●ポスト・シオニスト

    シュライム先生は、1945年、イラクのバグダードに生まれたアラブ系のユダヤ教徒です。
    1951年、5歳のとき、建国後間もないイスラエルに移住し、16歳で英国に渡ります。
    18歳のとき2年間、イスラエルで兵役に就きますが、以後は、英国在住です。

    かつては、シオニストであったけれど、今の自分は、「ポスト・シオニスト」であるとおっしゃいます。

    1948年(のイスラエル建国)をめぐるシュライム先生の解釈は、シオニストの立場であり、これを明確に否定するパペとは異なりますが、イスラエルの現状、そして、イスラエル/パレスチナのあるべき姿(未来像)については、反シオニストのパペと同じです。

    イスラエルとアラブ諸国との関係史がご専門ですが、今回の京大講演会では、ひとりのユダヤ人知識人の立場から、イスラエル/パレスチナの問題について、いろいろとお話をうかがいます。

    7月2日(日)に東京大学で開催されたシンポジウムでは、占領の終結の可能性について悲観的にならざるを得ないという言葉で講演を結んでおられました。
    それでもなお、闇の中で私たちが向かうべき灯となるのが知識人の責務であるとすれば(サイードの死に際して、パペが送った言葉です)、私たちは、この闇の中をどこに向かって航行していけばよいのか、明日は、シュライム先生とともに考えたいと思います。

    18:30〜21:00(開場18:10)
    吉田南キャンパス(いつものキャンパスです)、吉田南総合館 南棟地下01教室
    入場無料
    使用言語:英語(日本語逐次通訳あり)

    みなさまのご来場をお待ちしております。

    岡 真理
     


    コメント
    コメントする








       
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック